日本トレイルランナーズ協会

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トレイルランニングツアー・講習会の安全な開催のためのガイドライン (案:2025 年 9 月)2025.09.30

2025年9月

トレイルランニングツアー・講習会の安全な開催のためのガイドライン
(案:2025 年 9 月)

日本トレイルランナーズ協会

【基本的な考え】

トレイルランニングが行われる自然は、それがたとえ里山や一般的な登山道でも、リスクが遍在し、潜在し、そして変化する環境です。そのような環境で活動をする以上、いつ・どこでトラブル/事故が突然発生してもおかしくありません。

グループで行動していれば、一般的にリスクは低減するはずですが、一人一人がリスクを想定し、対応する心構えが無ければ、必ずしもそうはなりません。特に、リーダーとして他者を率いる場合、及びそのような活動の主催者となる場合には、事故やトラブルを防ぐためにリスクとそのコースの特性をよく理解し、対応できるスキルを持って活動することが不可欠です。特に有償で活動を行う場合には、その立場に伴う法令遵守及び事故が起きた場合の法的責任などの理解も必要です(※)。

そして、それらを全うするためには、企画前、計画中、現地での行動中、およびトラブル発生後のそれぞれの段階で、以下のような対応を行うことで、事故を防ぎ、最悪の場合にも関係者が悲しい思いをすることを回避できます。

なお、このガイドラインは、滑落や落石、道迷いなどのリスクがある一般的な山岳地で行われるツアーや少人数グループのトレイルランニング講習会を想定し、リーダー向けに作成されたものです。よりリスクの少ない場所での講習会においても、このガイドラインを参考に、参加者の安全に配慮した活動を心がけてください。

(※民法、道路交通法、自然公園法、旅行業法など)

 

参加者の方においても、以下の点にご注意ください。

引率するリーダーや主催者には参加者の安全に配慮する義務があります。しかし、その程度は主催者と参加者の関係や場所によって異なります。また、トレイルには 100%安全な場所はありません。活動の説明書の内容を確実に把握し、不明な点はリーダーに確認し、参加者が準備やツアー中にすべきことは確実にできるようにしてください。リーダーと参加者の協力によって、事故が発生し、さらに事故が不幸にも最悪の事態に至るリスクを下げることができます。

 

1)企画前:ツアーのリーダーや主催者として活動する前に

▼リーダー自身が以下に記す事前計画、行動中、トラブル発生時に対応できる十分な知識とスキルを持っているかを確認してください。

▼リーダー自身がルートや山域について十分な知識を持っていますか?特にルートと実施時期に対応したリスクについての知識が十分であることを確認してください。

 

2)計画時:ツアーの行程を決め、その募集をする際に

▼ルートは参加者のレベルに対応していますか?そのために参加者のレベルや体調の把握はできていますか?また、参加者数やそのレベル、コースの特性に応じたスタッフの体制は整っていますか?

▼計画したコースやスケジュールは計画書として文書化していますか?また参加者と共有していますか?特にこの計画書はオフサイトの関係者(現場にいない組織の一員や支援者等)とも共有することが、万が一の対応をスムースにします。

▼コース利用の許認可や利用上の注意点を把握していますか?

(一般に通常の登山道は、私有地であっても事実上通行が認められていますが、バリエーションルート(登山地図等には掲載されていない一般的でないルート)では必ずしもそうではありません。そこで守るべきルールを知り、参加者と共有することがトラブル回避につながります。)

▼状況の変化(参加者の体調や天候)に応じて、ルート変更によりリスクの回避が可能ですか?その変更ルート(エスケープルート)の安全性は確保されていますか?

▼講習の条件やそこで発生するリスクを参加者に説明し、その同意が得られていますか?(講習の条件やそこで発生するリスクを参加者が理解していることは、参加者自身によるリスクの回避につながります。これらの説明と同意はできるだけ文書によることが望ましいです。また同意書では参加者の家族等の緊急連絡先も必ず把握しましょう。)

▼参加に必要なレベル、装備、活動に必要なルールやマナー等などについて十分な周知ができていますか?

(必要な装備品の例:トレランシューズ・レインウェア・防寒着・飲料水・行動食・ヘッドライト・ホイッスル・携帯電話・ファーストエイドキット・地図・コンパス・地図アプリ・位置情報共有アプリ、予備バッテリー。位置情報共有アプリは道に迷った場合の命綱ですが、その限界や利用法について理解し、また参加者に周知することが必要です。)

▼必要な保険に加入していますか?

(事故が起きた際に参加者の金銭的な負担の一部でも補償しうるスポーツ傷害保険や山岳保険などに加入するよう手配し(或いは、加入していることを確認し)、事故等によって主催者及びリーダーの法的な責任に起因する金銭的な負担を一部でも補償しうる賠償保険に入ることも検討しましょう。)

 

3)実施時:現場で変化するリスクに対応して

▼活動中の参加者との通信手段は可能な限り用意し、参加者の位置情報を把握・共有できるシステム(アプリ)を利用しましょう。ただし、システムにより長所短所があり、精度や電波送受信にも限界があることに注意してください。

▼出発前に、参加者が適切な用具等を身につけていること、必要な装備品を携帯していること、それらの装備品および地図・位置情報共有アプリの使い方を理解していることを確認してください。

▼リーダーは、トラブルや緊急時に対応できる装備等を携帯してください(予備の飲料・食料、防寒用具やツェルトなど)。

▼行動中、リーダー(アシスタント等も含めて)は参加者から離れず、常に参加者の行動を把握できる位置にいることが原則です。これは休憩中も含みます。

▼参加者の状態(疲れ具合、体調)には常に気を配ってください。

▼分離を前提とする講習(例:ナビゲーション講習)、ではバディシステム(2 人 1 組で行動する)を使うことも検討してください。

▼コース上でリスクが高い場所に適切に対応する。

(道を間違えそう、滑落しそうな斜面、落石等落下物の恐れがある等では、主催者は適切にリスクに対応するとともに、参加者に事前の注意喚起とその場所での適切な行動のための指示を出すことが必要です。特に参加者の知識が十分でなかったり、気づくことが難しいリスクがある場合には、その説明や指示が不可欠です。)

▼参加者の体調や、ルートの安全性に影響する天候変化には常に注意すること。これらの状況の変化に対する判断の基準(どんな状況なら中止、あるいは短縮するか等)を予め決めておいてください。

 

4)遭難・トラブルや万が一の事態が発生した場合

①道迷いの場合

・万が一、はぐれた遭難者本人から連絡を受けたら、「周囲の安全を確認し、その場から動かないように」と指示します。

その際、落ち着かせ、携帯電話の受信状況とバッテリー残量を確認します。

現在の位置情報を聞き取るか、地図アプリを利用し現在地座標を送ってもらうこと(SNS やショートメールで可)が望ましい。

・遭難場所が確定でき、そこまでの安全なルートを確保できる場合は、速やかに遭難場所に救助に向かいます。(二次災害に注意)

・遭難場所確定に自信が持てない等、リーダーが速やかに救助対応できない場合は、ためらわず 110 番に捜索要請しましょう。本人が安全な場合は直接 110 番させることも有効です。(警察が位置情報を得られるため)

 

②道迷い以外のトラブル(滑落・転落や落石など負傷を伴うもの等)の場合

・他の参加者と自分の安全確保を行います。

・応急処置を行います。

・(主催者だけで対応できない場合)躊躇せず、警察・消防へ通報してください。

 

③参加者の事故・けが等で緊急連絡先である家族等への連絡が必要となった場合

・本人からの連絡ができない場合、同意書に記載された緊急連絡先に連絡します。

・事実のみを伝え、憶測は伝えないでください。その際、家族等の心情に寄り添いつつも冷静な口調を心がけてください。

・留守電の場合、断片的な情報(例えば「遭難した」「大ケガをした」等)を残してしまうと、家族の心配が増幅する場合があります。基本的に、本人がツアー・練習会に参加していること、その主催者・リーダーから連絡していること、そして主催者・リーダーの電話番号を伝え、折り返し連絡するよう依頼することを忘れずに伝えてください。

・家族等が現地にくる場合には、最寄り駅への迎えなどの対応をするとともに、家族が落ち着ける居場所を確保し、スタッフが付き添う等、誠意ある対応を心がけてください。

 

以上

上記内容は、下記pdfからもご覧いただけます。

トレイルランニングツアー・講習会の安全な開催のためのガイドライン (案:2025 年 9 月)